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     藤田 三歩 回顧展

 

藤田三歩(ふじたみほ)

1950年5月10日生まれ。芦屋芸術学院を卒業後、文具メーカーの イラストレーターとして勤務。1975年夫君とともにキャラクタ企画会社を設立。
数多くのキャラクターを生み出した。
30才の頃からメルヘン画を描き出しカラーインクを使った透明感のある独自のイラストを描き始める。
1984年初めての画集「森でハミング」を白泉社より出版。1985年より全国各地で原画展を開催し好評を博す。以後精力的に活動を続けるが1993年不治の病に倒れ他界。



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 実は今から約5年前、博多の町を歩いていると何かに吸い寄せられるように、ある画材店に入っていきました。
そこで目にしたのが、藤田三歩さんのT雨上がりの贈り物Uです。 ほのぼのとした幸せ色のその絵を見ていると だんだん暖かい気持ちになってきて、どんどん私の中にその絵の子供たちが動き始めました。
 何か不思議な巡り合わせを感じた私はすぐにその絵を買って帰り、自宅のエレクトーンの横に飾りました。その日から練習の前後には必ずその絵を眺めていたのですが、ある時その絵から言葉では説明できませんが、力を感じる事がありました。その絵を見ていると自然に頭の中でメロディーが流れ始めるのです。そうして作った曲が、同封しましたテープの曲T雨上がりの贈り物Uです 。この曲は私にとって宝物のような作品となりました。
と言うのは、この曲で自作自演した音楽のコンクールで賞をいただいたのを切っ掛けとして数々のステージにたつことができ、現在も

 

地味ながらもエレクトーンの演奏活動が続けられるようになりました。たくさんの人々に出会うことも出来ました。その頃から夢見ていたのが、いつの日か三歩さんの前でこの曲を演奏する事でした。
 そして今年に入り、1年後の1995年1月11日(水)に地元佐賀で自主コンサートを開く事が決定しました。今からご案内だけでも差し上げておけば、スケジュール的に何とかご招待できるかも・・・と考え、ダメで元々、メルヘンギャラリー社へ問い合わせて見ました。
 しかし、思いもよらぬ訃報を知らされ、どと力が抜けてしまいました。こんな事ならどうしてもっと早くにお礼の手紙だけでも出さなかった後悔ばかりです。
今となっては私の夢は夢で終わってしまいましたが、三歩さんの絵のお陰で羽ばたけた音楽家が一人いることだけでもお伝えしたく、ペンを執りました。
     ’94.1.23(日)

        佐賀市  久米詔子





出来るだけ長い時間見る人々の目を
私の絵に引きつけたい。だから
細かい所まで描いてしまうの、
自分も楽しみながら・・・

多彩にその才能を開花させた、三歩さんの活躍
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  絵をもっと身近に置いてほしいから

絵をもっと生活の中で楽しむ事が出来たら・・・
もっと絵を生かせる舞台を広げたい。この願いから三歩さんのパズル、ハンカチ、タオルといった商品が生まれてきた。パズルはピースの抜き型によって、人物の顔が切れる可能性が出てくるが三歩さんは気にせず、絵をゲーム感覚で楽しむ方法として良いアイデアだと言っていたそうだ。
色を沢山使い、描写も細かい三歩さんの絵をタオルやハンカチにプリントするのはかなり大変であったらしい。でも、心配をよそに仕上がりはとても美しく仕上がった。

『絵本』の世界でも多くの作品を残す

三歩さんは多くの絵本を出している。
 初めての絵本「えっちゃんの名前」(’82)は三歩さんの会社が一丸となってお話と絵をつくり出版会社へ売り込みに行ったもの。お話の原案は鈴本由美さんとか。造形社の社長は三歩さんの絵は、国籍を問わず世界中で親しまれると大変気に入って、アメリカ、ヨーロッパ向け絵本のイラストを依頼した。三歩さんは肌や髪の毛や目の色の違う世界中の人々を描くのを楽しんでいたという。
このように三歩さんは絵本は世界においても活躍している。

 

■藤田三歩さんと私-@

三歩さんとクマのぬいぐるみ

 藤田三歩さんと一緒に仕事をしたのは’87年頃ああ月日のたつのは、ほんとに早い。あるおもちゃメーカーが、新しくアメリカ製のクマのぬ いぐるみを売り出すことになったのだが、ついてはそのクマを主人公にした絵本を作りたいという。このクマちゃんというのが不思議なシロモノで、毛皮がジッパーで脱げるようになっていて、なかにはしま柄のパジャマを着ているのである。このナンセンスな発想と、クマのおおらかな表情がけっこう気に入った私は、絵本作りにとりかかる事になった。
 編集者と一緒に豊中のお住まいをお訪ねしたとき、三歩さんは赤ちゃんを出産なさったばかり。若さと健康と、仕事への情熱と自信で、まぶしいくらい輝いてみえた。

やっぱりクマのぬいぐるみが気に入って「見本品だからかえさなっくちゃならないんだって。」と残念そうに抱きかかえていらした。
 出来上がった絵はカラフルな色彩で、隅々まで丁寧に描かれたすばらしいもので、この絵本は後にアメリカでも翻訳出版された。
 かんじんのクマのぬいぐるみの方は、その後立ち消えになったのか、売り出されたという話は聞かないが、私と三歩さんとの間には「きせかえくまちゃん」「 おしゃれなべべちゃん」という美しい二冊の絵本が残った。

 暗い、大人の絵は私向きじゃない。光あふれる楽しい絵が好きという三歩さんの世界に、透き通 った明るく鮮やかな色彩のカラーインクはぴったり合った。 原画展があちこちで開かれるようになり、たくさんの人々に絵を見てもらえるようになった三歩さんの、たった一つの悩みはカラーインクの退色。
 長時間光をあてているので驚くほどのスピードで色が薄れていく。ガッシュなどにも挑戦したが、結局はカラーインクへ戻ることになる。はかなく色あせてゆくけれどだからこそ出来上がった絵の美しさを伝えたい、そう思っていとおしく絵を描いていたに違いない。

■藤田三歩さんと私-A                          topへ戻る

誰よりも三歩さんに褒めてもらうのが嬉しかった

 三歩さんは私が入社した文具メーカーの先輩で、私に絵をずっと描いていこうという気持ちにさせてくれた人です。私は人物を描くのが苦手で、キャラクターを作り出すのに苦労していたとき三歩さんが「動物が好きだったら無理しないで、動物を描いてみたら?」とアドバイスをしてくれました。それから私は動物のキャラクターを作るようになり、三歩さんに褒めてもらいながら絵を続けていく自信を付けてきたように思います。『FLOWER VILLA』という作品の加筆は似せようとがむしゃらにならずに、私なりにこんな風に描いたら三歩さんはきっと喜んでくれる、と考えながら楽しく描きました。天国の三歩さんが以前のように笑顔で褒めてくれるのを祈りながら。

■藤田三歩さんと私-B

鈴本由美さん (イラストレーター)

努力家の三歩さんはいつも私の目標でした

文具メーカー、藤田ご夫妻のキャラクター企画会社と三歩さんとのおつき合いはとても長いのですが、三歩さんほど仕事に対して真剣に取り組んでいた人を見たことがありません。仕事は絶対に手を抜きませんでしたし、女性はもっと社会でがんばらなくちゃだめよ、と言っていつも上を目指して進んでいました。クライアントの意向を聞き、自分なりにそれを消化したうえで描いた三歩さんの絵は、最終的に先方の希望と違っていてもクライアントが納得する完璧なものでした。
三歩さんはいつも私の目標です。三歩さんが私の年齢の時はこうしていたと、いつも三歩さんの軌跡を思いだし、自分も頑張らなければと元気づけています 。

 


 
 三歩さんは突然腹痛を訴え病床に伏した。入院が長引くに連れ、勘の鋭い三歩さんは自分の病気が治らないことを悟り、できるだけ長く家で過ごすことを願った。
 自宅のアトリエで体が許す限り机に向かい、三歩さんは絵を描き続けた。今までのような細かい絵は時間もかかるし体にも負担がかかって描けないけど、時間がゆっくり取れるようになったから、自分がいつか描きたいと思っていた絵が描けるわ、と藤田氏に言ったそうだ。 その絵は、一つの椅子と椅子に寄り添う花が描かれた物である。
 三歩さんは椅子と花をテーマに12カ月、シリーズで描きたかったという。しかしその思いは果 たすことができなかった。1993年9月14日、藤田三歩さんは43年の短い一生を終えたのである。スケッチブックの最後のページには、鉛筆のデッサンだけが残された。
 完成を待たずして。
 

『気持ちに手と頭と時間のフィルターを少しずつ重ね、心に
刻まれたものを描くことができるようになりました・・』

三歩さんが病に倒れてから描いた作品。


三歩さんの創作の軌跡がすべて見られる画集
三歩さんの集大成とも言える画集が2冊セットで刊行されている。欧風のイラストを中心に構成したハミングと、和風の風情の漂う作品を集めたふるさとの詩。どちらも、微風のようなみずみずしさがいっぱいの画集です。
A4変形判。定価は一万円(送料別)です。
問い合わせ
〒553-0022 大阪市淀川区西中島4-6-4
トムボーイビル4階
株式会社トムボーイ
tel 06-6304-8596
fax 06-6842-0169
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藤田三歩回顧展のページは1994年6月1日発行の月刊モエ(白泉社)に掲載されました

特別企画  画家・藤田三歩 誌上遺作展にそって構成いたしました。


 

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